人生何があるか分からぬ

葛藤を乗り越えて出産を決意したいちOLの記録

3つ目の病院へ

そしてまた病院探し。

ネットで探してみたけど最寄り駅では良い病院が見つからなかったので隣駅の産婦人科へ行くことに。

Aの隣駅とBの隣駅それぞれに産婦人科があり、迷ったけどHPがまだ機能していて女医さんのいるAの産婦人科に決定。

Bは夜遅くまでやっているのが魅力だったけど、HPがちゃんとしていなかったのと男性医師だったのがネックで。

 

予約不要の病院なので、午後半休をとって午後1の診察に間に合うように向かう。

目的は本当に切迫流産でないかを再確認してもらうこと。

 

古めかしい個人病院。

待合室は広いけどウォーターサーバーもなし。

受付も本当に昔の小さな受付台で愛想のないオバサンが対応。

けど、先生がとても良い方。

女性の方でお母さんのような柔らかさと話しやすさがあって、助手の方々も年配だけどとても優しく感じが良かった。

 

そしてやっぱり切迫流産ではないと言われた。

あまり重い軽いとか判断したくないけど、多少血が出ているくらいだと。

絶対安静とも言われなかった。

夫とも話したことだけど、診る人によって結果は変わるもので判断を急いじゃいけないんだな・・・。

(それとも急に治った?)

 

最初の病院で切迫流産と言われ、それからは何をするにもビクビクしていたからやっと安心できた。

無事に通勤できて一安心、無事にお風呂からあがれて一安心、寝る時には大きめのタオルをお尻に敷いておいて朝起きて出血していなくて一安心、のような感じだったから。

 

もしここに通うなら血液検査をしないといけないからまた来てねと。

この時点で妊娠9週。


まだ結論は出ていないけど、夫も私も何となく産む方向に向かいだした。

中絶手術の先延ばし

帰宅して夜に夫と話す。切迫流産ではないと言われたと。

私同様に驚く夫。

そして「じゃあちょっと中絶は待とう。1週間くらい考えてみようよ」と。

私もうなずいた。

 

そして2人で久しぶりに笑い合えた。

心が軽くなった自分がいた。

 

翌日、病院に電話して中絶手術を1週間先延ばししたいと伝えた。

そうしたら「その週数ではもううちでは対応できないので他を探して下さい」と言われてしまった。

まだ初期中絶には余裕のある週数だと思ったけど‥

まあ、病院ごとに対応できる週数の違いがあることは知っていたので。仕方ない。

中絶の申込み、そして転機

中絶を決めたので病院を調べることに。

この頃は既に9週だったので急がなくては。

8月初旬だったが、病院によっては早めの夏休みで長期休院の病院も散見される。時期が良くなかったなあ。

 

妊娠初期の中絶は値段も10万円前後とお安く、全身麻酔をかけるので痛みもなく、あっという間に終わるという手軽さに驚いた。

 

早めに決断して良かったかもしれない・・・。

 

家の近くやよく通る場所は嫌だった。

そこを通る度に思い出して辛くなるだろう。

 

色々とネットで調べたり電話で問い合わせながらそれなりに離れた場所、でも行きやすい場所で良さそうな病院を見つけた。

 

予約は不要だったので平日に午後半休をとり、赴いた。

 

先客は3名ほど。

特にお腹が大きい人たちではなかったが、きっとこの人たちは普通に出産するのだろう。

なんとなくそんなことを感じ、いたたまれない気持ちになって小さくなっていた。

 

ほどなくして診察室に呼ばれる。

女性の先生は問診票を見ながら「お産みにならないの?」と。

「仕事が変わったばかりで休めなくて・・・夫とも相談して決めました」と答える。

 

診察台に上がり、中を確認してもらう。

 

このまま手術を受けることを確認し、夫のサインも必要な同意書を渡される。

そして3日後の土曜の朝一で手術を受けることになった。

その前日、つまり2日後の金曜の夕方に子宮を広げる準備をするからそこにも来てくださいと。

 

ふと気になったので聞いてみた。

 

「あの、妊娠を確認した病院では切迫流産の状態と言われたんですけど、手術は大丈夫なんでしょうか」

 

「切迫流産?いや、それはないですよ。

多少血は出ていますけど」

 

え?

 

切迫流産じゃない?

 

だって妊娠確認の診察に行ったの1週間以内だよ?

 

頭の中が「?」だらけになる。

これが大きな転機だった。

 

夫婦の結論

夫に妊娠を伝えた2日後の夜、今後どうするかそれぞれの結論を伝え合う時間を作った。

 

それまでの間、ネットで中絶について色々調べた。
中絶とはどんな方法で、どんな値段なのか。
中絶を選んだ人の話、産むことを選択した人の話。

色々と調べて考えての結論を出した。

 

お互い、どちらかの意見にぐらつかないようにせーので言うことに。

 

夫「中絶する」

私「さよならする」

 

2人の意見が一致した。

 

2人の思い描くこれからの生き方や働き方を考えて考えての結論。

 

 

 

 

それでも、もちろん命の重さは承知している。

最低なことをしようとしている。

生きている命を止めようとしている。

授かった命を喜べないなんて、人として最低だ。

 

分かっているんだけど産むという選択肢を選べない。

苦しくてまた涙が止まらなかった。

妊娠を伝えた時の夫の反応

妊娠したこと。

切迫流産の可能性があると言われたこと。

せっかく希望するポジションの仕事を始めたばかりなのにどうしよう。

 

気持ちのまま、どんどん伝える。

涙もどんどん溢れてくる。

 

夫は、横に座って静かに私の話を聞いてくれて、そして話し始めた。
私が新しいポジションでの仕事が始まってとても楽しそうにしていたのを見ていたからやりたいことをやってほしいと。それが自分の刺激になっていると。
前と違って子供が欲しい気持ちは別に無いから中絶でもいいと思うと。
でも、産みたいなら全力でサポートするよと。

 

夫がまず中絶を提案してきたのは意外だった。

でも正直、絶対産んで欲しいと言われなかったことに安堵の気持ちを覚えた。

心がぐらついて不安定だったその時に強く言われなかったことに救われたなと。

 

一旦保留にしてお互いゆっくり考えて、明後日には結論を出そうと言ってその日の話し合いは終えた。

子供を望まなかった理由、そしてここに至るまでの経緯

私は元々子供が欲しい願望がなかった。

「いつか機会があれば欲しいかな」
という、既に「いつか」に来ている年齢なのにいつまで経ってもこう考えるのが精一杯。

子供は嫌いではないが好きではない。

35という年齢になれば友人も何年も出産ラッシュ。
もう何度出産祝いを贈ったやら。
友人に子供が産まれたら嬉しいけど、「羨ましい」「私も子供が欲しい」なんて気持ちは一切生まれなかった。
むしろ「子育て大変そうだなー。よく産もうと思うな。偉いな。私は無理。いらない」という気持ちが強くなるばかり。


だって子供なんて手はかかるし、お金もかかるし、自分の時間はなくなるし、自由に旅行やレストランや飲み会にも行けなくなるし、大きくなればなるほど心配事しかないし、犬と違って24時間何年間もアレコレ面倒をみないといけないし。

一方、結婚して3年目になる夫は2年前くらいまでは子供を欲しがっていた。
「みのりちゃんとの子供欲しい!」
という夫の切実な声が忘れられない。

だから、私は子供を正直望まなかったけど、この人に自分の子供を抱かせてあげられるのは私しかいないから覚悟を決めていつ妊娠してもいいように受け入れることにした。
まず2人で風疹とはしかの予防接種を受ける。
そして避妊はしないことに。

進んで基礎体温をつけることもしないし、何か特別な努力もしない。
でもいつできてもいいように葉酸サプリメントを摂取し続けた。

そんな生活を約2年半。
でも一向に子供はできない。
避妊しなかったらすぐに子供ができると思っていたのに意外だった。

特別子供を望まない私はともかく、子供を欲しがっていた夫は不妊治療までは進めてこなかった。
不妊治療してまで、という気持ちがあったのと、2人して愛犬を溺愛していたため、夫も子供より2匹目を飼いたいという気持ちの方が強くなったようだ。

それにマイホームを検討して土地探しをしており、世帯収入の高いDINKSの私たちならかなり良いお家を建てられるのに、子供がいたら計画も変わってしまうというのもあっただろう。
実際ここ1年くらい土地探しをしているがなかなか見つからず停滞しているのが現状だったが・・・。

そして私の仕事にも転機が訪れる。
6月のある日、1年前から希望していたポジションへ異動できるかもしれないという話がおりてきた。
仕事環境を変えたく、上位資格も持っているそのポジションはずっとチャレンジしたかったもの。もちろん受けた。
そして7月からめでたく異動。

代わりがきかないポジションの業務。
最低3年は努めたい。

夫に話して避妊してもらおう。
年齢的に35歳だからここで避妊するということは、もう子無しという人生を選択すること。
でもそれこそ私が望んでいたことだし、2年半トライしてダメだったんだし、2年前とは気持ちが変わっていた夫も快諾してくれた。

そんな矢先。
異動して1ヶ月目の7月に判明した妊娠の事実。

異動の話が出た6月に妊娠したようだ。

2年半できなかったのにどうして今。
やっとやりたかったことをつかんだのにどうして今。

仕事への情熱、改めて自分たちの生き方を確信していたのに目の前が真っ暗になるようだった。
でも子供は確かに私のお腹にいる。
聞かされた規則正しい少し早い心音も頭を離れなかった。

ショッキングな通達

妊娠していた。

その事実を改めて突きつけられただけでも軽いショック状態だったのに、更に追い打ちをかけられる。

「でもね、今、切迫流産の状態なんですよ」

せっぱくりゅうざん?

聞き慣れない言葉。超音波の写真を見せられながら説明してもらう。

お腹の中の赤ちゃんを繋ぎ止めているところの血管がたくさん切れてしまっており、体内にとどまれず流産してしまう可能性があるとのこと。

「絶対安静だね。ここには入院施設はないけど、病院によっては即入院って言われてもおかしくない状態だよ。仕事も休みなさい。家事もお風呂もダメ。トイレ以外はずっと横になっていて。会社に出す手紙書くから。仕事には行ったらダメだから郵送してね」

「切迫流産したら血が物凄い出て救急車呼ばれることになるからね」

待って待って。何それ。どうしよう、どうしよう。

頭がぐるぐる。

つたなく色々質問するも、先生にも助手の女性にもきつい言葉で言い返される。

こちらの事情なんて知る由も無い人たちだけど、もっと優しく聞いて、答えて欲しかった。

心が傷ついて診察室を出る。
夫から「肉でも食べて帰らない?」とLINEが来ていたが訳は話さず今日は家に帰ると伝え、ガッカリする夫の返信を見ながらどうしようもない気持ちに。
お会計を済ませて病院を出る。

家に帰る手段は自転車。
本当は自転車なんて乗ったらダメなんだろうけど、歩いて帰る気力体力もなく、半ばヤケになって自転車で帰宅。
人気のない道を走りながら涙が出てくる。


無事、帰宅。

本当はお風呂もダメと言われていたが、メイクも汗もモヤモヤも流したい。
怖い気持ちと戦いながらシャワーを浴びる。
何ごともなくあがってホッ。

その日の夜に夫に「話したいことがある」と伝えて明るいリビングではなく間接照明が心地よい寝室に来てもらう。

妊娠が決まったら初めての報告には録音か録画しようと決めていた。
喜ぶ夫の声や姿、やりとりを残したかったから。
こんな形は望んでいなかった・・・けど、iPhoneのボイスメモをこっそりオン。

そして妊娠していたこと、でも切迫流産の可能性があるということを矢継ぎ早に報告。
夫はただただ驚いていた。

どうしてシンプルに喜べないのか。理由は次の記事にて。